From LA:ハリウッドで最も稼ぐと言われる職業、ショーランナーとは?

ハリウッドで最も稼ぐのは、テレビ界で“ショーランナー”と呼ばれる人たち。日本では馴染みのない言葉だが、つまりはドラマをプロデュースして成功させてみせる人たちのことだ。テレビは当たると、海外での放映権や再放送、DVDなど、長期に渡って利益を生み出すため、彼らが得る収入も驚くほど多い。たとえば 「マッドメン」のショーランナー、マシュー・ワイナーは、最後の3シーズン、それぞれ3,000万ドルの契約を取りつけている。

 


L.A. Times Entertainment公式Instagram(@latimes_entertainment)より
「マッドメン」でショーランナーを務めたマシュー・ワイナー

 
オリジナルドラマで完全に遅れを取っていたAMCを、「マッドメン」でヒットメーカーにしてみせたワイナーは、近年の“テレビ界ルネサンス”に貢献したひとり。それまでも活躍していたHBOやショータイムなどプレミアムケーブルに加え、ほかのケーブルチャンネルや、ネットフリックス、アマゾン、Huluなどストリーミングサービスが積極的にオリジナルコンテンツ作りに乗り出す中、彼らの立場はさらに強くなる一方。最近では、アマゾンやネットフリックスが有能な人材を、見事、古巣から奪ってみせる現象が起こり始めている。
例えば昨年には、ションダ・ライムスがメジャーネットワークのABCからネットフリックスに鞍替えした。彼女は「グレイズ・アナトミー 恋の解剖学」、そのスピンオフ「プライベート・プラクティス 迷えるオトナたち」、ケリー・ワシントン主演の「スキャンダル 託された秘密」などの生みの親だ。ネットフリックスとの契約は1億ドル以上と言われている。そして今週は、FOXと長年契約し、「Glee/グリー」「アメリカン・ホラー・ストーリー」「アメリカン・クライム・ストーリー」などをプロデュースしてきたライアン・マーフィー(写真ページ一番上)が、なんと3億ドルのディールをネットフリックスと結んだ。

 

When your hair goes mad.

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ションダ・ライムス公式Instagram(@shondarhimes)より
「グレイズ・アナトミー 恋の解剖学」で一躍売れっ子になったションダ・ライムス

 
理由はお金だけでないと、ふたりは強調する。ライムスは「メジャーのチャンネルの束縛から離れて、新しいことをやってみたかった」と述べた。テレビ局には、シーズンごとに20話前後を作るとか、やっていいことといけないことの決まりなど、さまざまなルールがあるのだ。マーフィーは「ディズニーがフォックスを買収したことがきっかけだった」と示唆する。この買収の報道が出た時、ディズニーのトップ、ボブ・アイガーが真っ先に電話をしたのは、FOXのお宝であるマーフィーだった。彼がいるからこそFOXのテレビはディズニーにとって魅力だったのだ。だが、マーフィーは、「これからは『アメリカン・ホラー・ストーリー』にミッキーマウスを入れろと言うのですか?」と、皮肉な返事をしたという。先月も彼は「自分がやることはディズニーとほど遠い」とのコメントをしている。

 

@penelopecruzoficial and @mrrpmurphy share a moment at the #ACSVersace premiere in Hollywood, CA.

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American Crime Story FX公式Instagram(@americancrimestoryfx)より
「アメリカン・クライム・ストーリー/ジ・アサシネイション・オブ・ジャンニ・ヴェルサーチ」を製作するライアン・マーフィーと主演のペネロペ・クルス

 
これらの“移籍”が、必ずしも全部ハッピーエンドになったわけではない。一足先に新シリーズをアマゾンで作る契約をとりつけていたワイナーは、共同製作するザ・ワインスタイン・カンパニーがセクハラ問題で経営危機に陥ったことと、ワイナー自身にもセクハラ疑惑が起きたことで、すっかり姿を消してしまった。それでも、ほかのショーランナーたちは、自分の選択について考えをめぐらせているはずだ。そもそもルパート・マードックがFOXの大半を売ろうと決めたのも、ドラマ作りでの競争にはいずれ負けると判断したからと言われている。アメリカのテレビ界は、今後、どのように変わっていくのだろうか。

 

猿渡由紀/L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、日本のメディアに寄稿。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。