ウォーキングデッドのゾンビはどこから来た? 映像文学に見るゾンビの歴史

『ウォーキング・デッド』のゾンビはどこから来た? 映像文学に見るゾンビの歴史

JALEE編集部

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パニックもののジャンルとして地位を確立しているゾンビ作品。そのゾンビはどこからやってきたのか、歴史とともに読み解いてみると、ゾンビという存在により魅了されます。

ゾンビのモデルはハイチ共和国の民間信仰、ブードゥー教

現代の映像作品で描かれるゾンビの起源は、ハイチ共和国のブードゥー教にあると言われています。

ブードゥー教とは西アフリカを中心に信仰されている宗教で、ハイチを起源とする宗教ではありません。しかし、17世紀頃からスペインとフランスがハイチを植民地化し、この地でサトウキビやコーヒーの栽培を開始。その際、働くことになったのが奴隷貿易によりアフリカ大陸から強制的に連れてこられた奴隷たちだったのです。

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ハイチ共和国の国旗

現在、多くの先進国においてブードゥー教は、どちらかと言えばネガティブなイメージを持たれがち。これには政治と宗教的な理由があると言われています(諸説あり)。前述の植民地時代の後、ハイチは独立を果たします。しかし、その後1915年に、アメリカ軍がハイチに上陸し、統治下に置いてしまうのです。この占領状態は1947年まで続くことになります。

占領する側とされる側、決して良好とは言えない関係の中で、キリスト教を唯一神として信仰するアメリカ国民と相容れない宗教観、国家のイメージ戦略などの面で、ブードゥー教の恐ろしい面ばかりが誇張されて世界中に伝わることとなったのです。

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ブードゥー教の呪物市場 Dominik SchwarzCC BY-SA 3.0

このようにして作られた恐ろしいブードゥー教のイメージには、生贄を使った不気味な儀式や黒魔術など様々なものがあり、その中の一つがゾンビでした。

元々は、強制労働をさせるための存在だったゾンビ

多くの人が持つゾンビのイメージは、足を引きずるようにして歩き、集団で人間に襲いかかるといった姿。

しかし、元々のゾンビ像は今とは大分異なるものでした。ブードゥー教における本来のゾンビは、罪などを犯し強制労働を課せられた奴隷たちのことで、従順に命令を聞くようにゾンビ・パウダーと呼ばれる不可思議な粉末状の薬が使われたと言われています。ゾンビ・パウダーの効用は飲んだ者を仮死状態にするとも思考能力を奪うとも言われており、効用はおろかその存在すらも謎に包まれています。

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※イメージ

そんな、ブードゥー教やゾンビ、ゾンビ・パウダーといった要素が、観る者の興味関心を引かなければならないエンターテイメントの場で採用されることとなります。

ゾンビのイメージを確立したジョージ・A・ロメオ

ゾンビが映画に初めて登場したのは、1932年のアメリカ映画『ホワイト・ゾンビ(White Zombie)』。新婚夫婦が挙式をあげるために訪れたハイチで、新婦がゾンビ・パウダーを飲まされてゾンビになってしまうという物語です。

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『White Zombie』 amazon.co.jp

ゾンビになった新婦は、死んでいるわけでもなければ、無差別に人を襲って人肉を食べようとすることもありません。ただ、主人の命令に忠実になっただけ。物語の最後では、元の心さえ取り戻します。当初は、今のゾンビ像とは全くかけ離れたものだったのです。

そんなゾンビが、今日のような姿、行動をとるようになったきっかけは、1968年に公開されたジョージ・A・ロメオ監督の『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド(Night of the Living Dead)』。

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『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』に登場するゾンビ(パブリックドメイン)

この作品に登場するゾンビは、墓場から蘇り、集団でゆっくりと歩いて人を襲うのです。『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』はゾンビ映画の金字塔とされる作品になり、この設定のゾンビを採用したゾンビ映画が大量に作られるようになったことで、多くの人が想像するあのゾンビのイメージが定着しました。

単なるパニックものからの脱却。さらに進化・派生を遂げているゾンビ作品

ジョージ・A・ロメオ監督によって確立されたゾンビ作品ですが、さらなる進化を遂げ続けています。

最近のゾンビ作品では、ゾンビになる原因はゾンビ・パウダーではなく、ウイルス感染。そしてアクション性を高めるために俊敏に走るゾンビが登場したり、はたまたコメディ作品に登場するなど、観る者の予想を裏切り、かつよりリアリティを追求したものになっています。

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『ウォーキング・デッド』最新作のシーズン7では、ニーガンとの熾烈な争いが繰り広げられている。(c) AMC Film Holdings LLC.

そんなゾンビ作品で今、最もアツイのが海外ドラマ『ウォーキング・デッド(The Walking Dead)』。このドラマはゾンビの恐ろしさはもちろんのこと、ゾンビを引き立て役にして、逆に人間の恐ろしい部分を引き立たせる作品となっています。これまでのゾンビ映画と言えば、人間対ゾンビだけ構図でしたが、『ウォーキング・デッド』の場合は、人間対ゾンビに加えて、人間対人間の構図をも描いています。2時間前後という限られた時間内で完結せざるを得なかった映画とは異なり、ドラマという長編だからこそ描ける深いストーリーなのです。

ゾンビ映画に見飽きたなんて人も、『ウォーキング・デッド』の世界観に魅了されて、寝不足になること間違いなしですよ。

 

『ウォーキング・デッド』シーズン8は2017年秋に放送予定!(詳細はこちら