アメリカは正義の国とよく表現されますが、その「正義」については何が本質なのか議論されることが多いです。『HOMELAND』においても、単純に悪を正義が打ち砕くストーリーではなく、テロリズムとは何かを複数の視点から描いています。特にブロディが絡むシーズン3までの話や、最新シーズンのイスラム教徒とアメリカの関係性については、(テロという手段は絶対に許されないという前置きはありますが)ある種彼らの正義も理解できます。今回は『HOMELAND』の一ファンとして、身近にあるビジネス上の正義と絡めてご紹介したいと思います。
1. ビジネスにおける正義とは何か?
ビジネスにおける正義。それは、会社に利益をもたらす事。よく会社はボランティア活動ではないと表現されますが、まさにそれです。会社組織を運営し給与を払っていくためには利益をあげていく事が必須条件となっています。
2. 正義の為に悪に染まっていいか?
正義を履行する為に何をしても許されるのか?ということは常に議論されます。例示するとすれば、お客さんを騙すような売り方をしたり、期待した品質以下の物を売りつけたり、法律に違反したり……。やり方はそれぞれですが、利益を上げる為に行える悪徳行為というのは無数に存在します。正義をより強く行おうとすれば、悪に染まるという相反性を持っているのはビジネスも国際上の正義も一緒なのではないでしょうか。
3. おなじ正義を見ているはずなのに……
『HOMELAND』において、キャリーが苦悩するのはテロリスト相手だけではありません。彼女の敵は、実はテロリスト以上にCIA内部に多い気がします。キャリーのテロとの対決に関して協力すべき存在が、いつの間にか足を引っ張る敵へと変容しています。ビジネスにおいても同じようなことは多いですよね。担当顧客を奪い取ったり、ミスを告げ口したり、あえて罠にはめてみたり……。ビジネスにおける足の引っ張り合いは給与や昇進をかけてのパワーゲームです。本来であれば同じ正義に向かっているはずなのに、いつの間にか同じ組織内でぶつかり合うことになってしまいます。
Dominic Fumusa as Ray Conlin and Claire Danes as Carrie Mathison in HOMELAND (Season 6, Episode 06). – Photo: JoJo Whilden/SHOWTIME – Photo ID: HOMELAND_606_0141.R
4. 同じ正義を見るためには
同じ正義を見るためには、相手を知ることから始めなければいけません。キャリーは、敵や不確定な存在に対して武力行使に頼るだけでなく、問題をコミュニケーションによって解決しようと努めています。自分の立場を知ってもらい、相手の立場を学ぼうとする。これは、ビジネスにおいても必須のスキルです。
例えば、部下ができたとして、目標に対してコミットが弱いと思った時。ただ攻撃的に部下と対立するためだけでは行動を促すことはできません。『HOMELAND』作中に登場するジョンという部下は実に不遇な立場にあります。イスラマバード支局長の立場をキャリーに横取りされ、ひとまわりも年下のキャリーが上司になりプライドを傷つけられた状態。そのためキャリーと度々対立するジョンですが、キャリーそんな時、権力ではなくユーモアあふれる口激や行動によって彼の妨害行為を封殺します。結果、話が進むごとに対立関係がだんだんと緩まり、片腕とも呼べる存在にまでなるのです。
最初から最後まで、上司だから命令を聞け!と強権をふるい続けると自分の立場を危うくします。同じ正義を見るためには、コミュニケーションを欠かしてはいけないのです。
『HOMELAND』において、キャラクター同士の正義のぶつかり合いというのは見どころのひとつです。自らの正義に基づくテロと、それを未然に防ごうとする正義。2つの正義のぶつかり合いはビジネスシーンにおいても常に発生していると言えるのかもしれません。何度折れても何度負けても、戦い続ける手を緩めないキャリーにこそ現代のビジネスマンに求められる素養があると言えるのではないでしょうか。
『HOMELAND』はアメリカでシーズン7を2018年放送決定!日本でも今後、放送予定です。
また、シーズン6までのストーリーはHuluでもチェックすることができますよ!