サスペンス超大作『ノーカントリー』が映画ファンに著しく好まれる理由(ワケ)とは

JALEE編集部

JALEEならではの海外ドラマ情報を発信しています。

JALEE編集部 の他の記事を見る

映画ファンを名乗る方には、ぜひとも見てほしい作品があります。それは世界の名監督、コーエン兄弟による『ノーカントリー』。第80回アカデミー賞にて、作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞の4冠を達成したサスペンス超大作です。

あらすじ

舞台は1980年代のアメリカ・テキサス。メキシコ国境にほど近い砂漠地帯です。ベトナム戦争帰還兵、モスが200万ドルを手に入れてしまうところから物語は始まります。モスが手にしたこの大金は、実はメキシコの麻薬組織の抗争に関連したもの。

大金を奪い返すべくギャングに雇われた最凶の殺し屋、シガーは逃げるモスを残酷に追いつめていきます。その後ろから2人の行方を探るのが、保安官のベル。しかしあと一歩のところでなかなか追いつけません。

スリラー映画を得意とするコーエン兄弟ですが、『ノーカントリー』はその中でも飛び抜けて暴力的な作品です。凄惨なシーンの連続にとにかく暗澹たる気分に浸ってしまうこと間違いなし。そして殺人鬼が迫り来ることへの恐怖に、良い意味でぐったりきてしまうことも請け合いです。

 

 

最も注目すべきは、ハビエル・バルデム演じる殺し屋、シガーのサイコパスっぷり。冒頭に、彼を逮捕しようとした保安官と対決する印象的なシーンがあるのですが、この瞬間のシガーの表情にぜひご注目ください。

シガーの特徴は、おかっぱ頭にぱっちりおめめ。バナナマンの日村さんを彷彿とさせるちょっとファンキーで可愛らしいルックスです。そんなところも、容赦ないシーンでこの人物の恐ろしさを際立たせる要素ではないでしょうか。

 

映画の原題は『NO COUNTRY FOR OLD MEN』。アイルランドの詩人、イェイツの作品『ビザンチウムへの船出』から、「それは老いたる者たちの国ではない」という書き出しを引用したものです。

この文章が、作中で一体どのような意味を持つのでしょうか。決してわかりやすい作品ではないものの、見た後には仲間と感想や解釈を語り合いたくなるはずです。

さて、アメリカでは、麻薬サスペンスはよくある作品テーマの1つ。ここからは、それにも関わらず『ノーカントリー』が色あせることなくファンに支持され続ける理由を解説します。

 

 

 

ここからはネタバレ注意

 

 

 

1. 主人公はあくまでもベル

あまりにも衝撃的なシーンが多いこともあり、ついシガーとモスに目を向けてしまいがち。しかし、あくまで主人公兼ストーリーテラーは保安官のベルなのです。一歩引いたポジションに視点を置くことで、単なる「追う・追われる」だけのスリラー映画に終わらない深みを見出すことができます。

2. 「意味深」すぎる結末

モスが殺されてジ・エンドかと思いきや、ベルの謎の語りをもってこの映画は幕を閉じます。「親父の夢を見た」「昔に戻ったような夢で、オレは馬に乗って雪山を進んだ。親父はオレを追い越して先へ行った」「オレがたどり着いたら、そこには親父がいるはずだとわかっていた」というような内容です。

 

「このラストの意味が分からない…」との意見が散見されますが、これぞ純文学といった趣ですよね。ベルと父親が向かう先はあの世とも考えられます。原題の『NO COUNTRY FOR OLD MEN』という文言からもわかるように、時代の波についていけない老人の悲哀を表していると筆者は考えます。急速に時代が移ろう現在のアメリカの様子など、幅広い解釈の余地が残されています。

何度も見たくなる名作

『ノーカントリー』は、いずれのシーンを見ても「こ、これはどういう意味なんだ…」と考え込んでしまうような作品なのです。監督の意図や社会とのつながり、作品そのものの意義を語り合いたい映画ファンの心をがっちり掴んで離さないのでしょう。

映像作品としての完成度も高いため、単純にサスペンスまたはサイコスリラーとして楽しむこともできます。人によっては、ただただ暴力的で恐怖を感じる作品。また別の人によっては、人生そのものを表現した作品。解釈が見る人によって変わるというのが、本作の大きな魅力です。

『ノーカントリー』は、FOXムービーにて8月16日(水)20:55~、17日(木)12:00~、31日(木)22:45~で放送予定です(詳細はこちら)。