絶好調の米テレビ業界を占う、2017年エミー賞ノミネートが発表!

JALEE編集部

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 テレビ界の黄金時代は、良いことばかりではないかもしれない。西海岸時間13日に発表になったエミー賞ノミネーションは、ここ数年、関係者の間で高まってきていたそんな不安を、改めて感じさせることになった。ノミネートされた番組や俳優は、どれも納得の名前ばかり。それもそのはず、ケーブルチャンネルだけでなくNetflixやアマゾン、Huluが自社番組制作に乗り出し、番組の数自体が膨大に膨れ上がった今、その部門でたった5人の候補に入るのは、昔よりずっと難しくなってきたのだ。コンテンツを欲しがっているこれらのチャンネルやストリーミングサービスは、メジャー映画スタジオが作らなくなってきているような大人向け作品のアイデアもどんどん受け入れ、監督や脚本家に自由を与えるため、一流の俳優が出たいと思うような役を提供することになっている。今年の候補者の名前に、ニコール・キッドマン、アンソニー・ホプキンス、ケビン・スペイシー、リース・ウィザースプーン、スーザン・サランドン、ロバート・デ・ニーロ、ジェーン・フォンダなど歴代オスカー受賞者の名前が続々並ぶのも、そのせいだ。これらトップ中のトップが入り込んできたことで、従来のテレビ俳優にとっては、 ますます狭き門になっているのである。
 


リース・ウィザースプーン公式Instagramアカウント(@reesewitherspoon)より
作品賞ノミネートのHBO『ビッグ・リトル・ライズ ~セレブママたちの憂うつ~』で主演女優賞にWノミネートされたニコール・キッドマンとリース・ウィザースプーン
 
 大変なのは、投票者も同じ。作品が増えると、見ないといけないものも増える。2007年、エミー賞のノミネーションのために考慮すべき作品数は、422本だった。それが10年後の今では848本と、倍に増えている。演技部門も、2007年には1,085人だったのが、今年は2,382人だ。さらに、テレビは、映画と違って長い。映画ならばせいぜい3時間で終わるが、テレビはメジャーネットワークなら1シーズンが22回ほどで、ケーブルでも8回か10回はある。エミー賞の選考では特定の1回が選ばれて、それを基準に投票することになってはいるものの、とくに長く続いているシリアスなドラマの場合、その前後関係をまったく知らずして評価するのは、実際のところ難しい。
 


『ハウス・オブ・カード』公式Instagramアカウント(@houseofcards)より
ロビン・ライトとケビン・スペイシーは今年も主演女優・男優賞にノミネート
 
 エミー賞がNetflix作品に資格があると決めた時、業界内にはちょっとした衝撃が走ったものだ。今やNetflixは、プレミアムケーブルチャンネルのHBOに次ぎ、2番目にノミネーション数が多い“チャンネル”に成長している。昨年初めて2部門でエミーに食い込んだHuluも、今年は『The Handmaid’s Tale』のおかげで18部門に急増した。今作は 最も話題とあり、受賞に至るかもしれない。こんな流れを受けて、業界関係者を対象にしたウェブサイトには、「ストリーミングはエミーと別にそれ用の賞を作るべきだ」とのコメントが上がったりもしている。その一方で、今年は NBCの『This Is Us』が、メジャーネットワークとしては6年ぶりにドラマシリーズ部門への候補入りを果たすことにもなった。メジャーも、負けてはいられないと思っているということだ。だが、何よりも重視すべきは、視聴者も、これだけの作品数には付いていけないという事実だろう。知らない番組ばかりが競い合うのなら、エミー賞授賞式の視聴率は下がる。今年の授賞式は、9月18日(日本時間)に開催される予定だ。テレビが大きく変革していく中、エミー賞はそれにどう対応していくのだろうか。
 
 

猿渡由紀/L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、日本のメディアに寄稿。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。