映像の色使いやホテルの外観、衣装、出てくるお菓子の形まで・・・どこをとってもポップでキュート。それが映画『グランド・ブダペスト・ホテル(2014年)』。第87回アカデミー賞では美術賞、メイキャップ&ヘアスタイリング賞、衣装デザイン賞、作曲賞を受賞。予告編を見るだけでも、「可愛らしい!」と感じる作品です。
今回は、『グランド・ブダペスト・ホテル』の魅力を3つお伝えします。
あらすじ
20世紀フォックス ホーム エンターテイメント公式YouTubeチャンネルより
1932年。品格漂うグランド・ブダペスト・ホテルを仕切る名コンシェルジュ、グスタヴ・H(レイフ・ファインズ)は、真心のこもった究極のおもてなしをすることで、顧客たちから愛されています。しかし、あるとき常連客のマダムD(ティルダ・スウィントン)が殺され、遺書にグスタヴの名前があったことから、莫大な遺産相続のいざこざに巻き込まれてしまいます。グスタヴは信頼するロビーボーイのゼロ(トニー・レヴォロリ)と一緒に、相続に関する争いを解決するためヨーロッパ中を駆けめぐることに・・・。物語はファンタジー仕立てでありながらも、ミステリー要素がメインであり、最後はちょっとほろ苦いという、ちょっぴり大人向けのテイストになっています。
1. ホテルの外観が可愛らしい
舞台となるグランド・ブダペスト・ホテルは、昔ながらのグランドホテル。日本ではあまり見られませんが、ヨーロッパの貴族社会では珍しくありません。特徴は、外壁がピンクと白の色使いで整えられているところ。作品のタイトルにもなっている通り、この映画の主役はホテルそのものと言っても過言ではありません。それほどの存在感を放っています。
相続をめぐった様々な事件はホテルの内部かホテルから離れた場所で展開されるため、実はホテルの全景が映し出されるシーンはわずか数回。それなのに1度目にすると脳裏に焼き付いて、なかなか忘れられない。まるでケーキのような可愛らしさと、グランドホテルとしての威厳を兼ね備えた外観となっています。
2. 愛すべきユーモラスな登場人物たち
主人公グスタヴは仕事となれば非常に有能な人物。そのうえ性格は、優しく紳士的。しかし愛嬌があり、面白くて、飄々としています。そこが彼の人たらしなところ。彼に会うためにホテルを訪れる高齢者たちもいるくらいで、事件の発端も、もとをただせばそんな彼の人格にある気がします。ちなみに、このグスタヴを演じるレイフ・ファインズは『ハリー・ポッター』シリーズを見た人ならお馴染みの“あの人”ことヴォルデモート卿を演じた俳優です。今作品では、鼻のない不気味なメイクとは打って変わって、口ひげを蓄えたユーモラスな風貌。
ほかにも、名画「少年と林檎」をグスタヴに贈るというマダムの遺言が気に入らない、マダムの長男ドミトリー(エイドリアン・ブロディ)は、側近を使って裏工作をし、名画を取り戻そうと画策します。グスタヴを刑務所送りにするまでは良かったけど、絵はグスタヴによって隠されてしまったため、なかなか思い通りにいかず、無駄な事件を発生させることに・・・。敵役ではあっても、ちょっと間抜けでなんだか憎めないのです。ドミトリーを演じるエイドリアン・ブロディは、どちらかというと頼れる役より、繊細な役や情けない役の方が似合うため、絶妙な配役だと思っています。
また、キャスト陣が豪華なのもこの映画の特長。エドワード・ノートンやティルダ・スウィントン、ジュード・ロウ、ビル・マーレイ、ウィレム・デフォー、シアーシャ・ローナン、レア・セドゥなど。しかもこんな名優たちを起用しておきながら、ほとんどが脇役にあてられているというのも驚きです。
3. 小物の配置など細かいディティールにもこだわっている
『グランド・ブダペスト・ホテル』の最大の魅力は、作中に登場する小物や映像の見せ方を、細かいところにまでこだわっているところ。なかでも、画面に映るもののほとんどがシンメトリーに配置されている点には思わず目を剥いてしまいますね。細かいところまで計算され、映画が作られていることが分かります。
ほかにも、ゼロの恋人であるアガサ(シアーシャ・ローナン)はお菓子職人なのですが、彼女の作るケーキがホテルに合わせた色味になっていて、とってもキュートなんです。ケーキの箱のデザインも素晴らしいので、映画を見る際はぜひ注目してみてください!それから、ホテルの従業員たちの衣装も非常に洗練されていて、私たちの目を楽しませてくれます。いえ、こんなおしゃれな衣装のホテルが実在するかどうかは別ですが。
ホテルの外観、キャラクター、衣装などすべてが可愛く、映画の雰囲気まで楽しめる作品です。細部の小物にまで注目してみると、ここで書いた以外の発見もあるかもしれませんね。