ⓒTwentieth Century Fox
日本では2017年9月29日公開となる伝記映画、『ドリーム』。公開前からSNSで話題になったことから、すでに公開を楽しみにしている人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、マスコミ試写会でいち早く鑑賞した筆者が、『ドリーム』の3人の主人公の魅力をお伝えします!ややネタバレを含みますので、ご注意を!
あらすじ
舞台は1960年代初頭のNASA(アメリカ航空宇宙局)。ソ連との宇宙開発競争で後れをとっていたアメリカは、有人飛行計画を開始します。NASAで働くキャサリン・ジョンソン(タラジ・P・ヘンソン)、ドロシー・ヴォーン(オクタヴィア・スペンサー)、メアリー・ジャクソン(ジャネール・モネイ)は、優秀ではあるものの常勤職員にはなれずにいました。その理由は、彼女たち3人が黒人だったから。当時のアメリカでは人種差別が横行し、黒人の社会的地位は低く、トイレやカフェなどでも白人と白人以外に分けられたのです。
20世紀FOX映画公式YouTubeチャンネルより
しかし彼女たちは有人宇宙飛行を成功させるために、差別や偏見と戦っていくことで黒人の地位向上へと奮闘します。『ドリーム』は、NASAの環境を変貌させたそんな3人の女性が主役となっています。
1. 数学が得意なキャサリン
ⓒTwentieth Century Fox
キャサリンは子どものころから数学が得意で、教師たちからも入学費の援助をしてもらったり飛び級したりするくらいの数学の天才です。
ⓒTwentieth Century Fox
NASAでは黒人初のスペースタスクグループに配属されるものの、そこでも、黒人のうえさらに女性ということから低く見られ、フェアに扱ってもらえません。彼女は腐ることなく、コツコツと実績を積み上げることで、上司からも認められ、重要な仕事を任されていくようになります。
しかし仕事は任せられるようになっても、NASAという環境そのものに人種差別の壁が残っているため、トイレに行く時ですら黒人用の棟に行かなければなりません・・・。黒人棟へ行き来するために職場を頻繁に抜けることを上司から責められた瞬間、彼女はついに感情を爆発させます。この出来事から周囲も少しずつ変化していき、彼女も次第に仲間として受け入れられていくという、必見のシーンです。
2. エンジニア系女子メアリー
ⓒTwentieth Century Fox
メアリーは機械いじりが得意で、冒頭でもその才能を遺憾なく発揮。さらに宇宙船のカプセル地球降下実験の際に、耐熱盤の弱さなどの問題点に気がついたことがきっかけで、その能力を周囲に認められるようになります。
そこで上司からエンジニアになるよう勧められますが、エンジニアになるためには、大学や高校での単位取得が必要。しかし彼女は、黒人が学べる環境ではないことを理解していました。悩んだ彼女はそこで、単位取得に必要な授業を受けるために裁判を起こします!この行動力が素晴らしい。彼女は自分のためだけでなく、自分の後進となる人々が苦労しないためにも行動を起こすべきと考えたのでしょう。
彼女が授業に初めて出席するシーンも見逃せません。周りの生徒たちが、黒人の女性がいることに呆然とするなか、自分の席を決めて何事もなかったかのように振る舞う姿は本当に凛々しいのです。
3. 管理職ドロシー
ⓒTwentieth Century Fox
ドロシーはキャサリンやメアリーとは違い、管理職に近い立場。しかし白人以外の管理職登用は前例がないということから、非常勤扱いで、いつ契約が切られてもおかしくない状況です。さらに彼女には、他の2人と違い背中を押してくれる人もいません。全てを自分でなんとかしなければならないのです。
ⓒTwentieth Century Fox
そして彼女は、上司に訴えを起こしたり、裁判を行うことはありません。ただ地道に仕事で結果を残し、自身の必要性、重要性を理解してもらっていくのです。彼女の場合は、パソコン導入の際に、パソコン会社のスタッフですら起動できなかったパソコンの起動を手伝うなどして、周りから“いなくてはならない人材”と認めさせます。
ドロシーと彼女の上司ヴィヴィアン・ミッチェル(キルスティン・ダンスト)のやりとりはとても面白く、また重要なシーンでもあるので鑑賞の際は要注目です。
才能だけでは出世ができない。欠かせない仲間の存在
彼女たちがいかに優秀であったとしても、差別社会の状況を理解してくれる上司や同僚がいなければ出世ができなかったことでしょう。つまり、この映画から受け取れるメッセージの一つは、環境を変えるには自分を認めてくれる仲間が必要ということ。
ⓒTwentieth Century Fox
また同作を語るうえで重要なのは、黒人のヒーローとして描かれる主人公の3人が全員女性である点です。史実に照らせば、黒人の地位向上にこぎつけるまでには男性の活躍も間違いなくあったはずですが、この映画では女性たちの偉業という形でスポットを当てたかったのでしょう。
日本社会においても、まだまだ男性優位な部分が根強く残っています。『ドリーム』のように女性が活躍する映画がヒットすることで、もっと融通の利く社会に生まれ変わっていくといいですね。
9月29日(金)シネマズシャンテ他、勇気と感動のロードショー!
配給:20世紀FOX映画
ⓒTwentieth Century Fox