世界的大ヒットの裏でも、長い戦いが続く… 「ウォーキング・デッド」の制作裏話

 LAでは今、『ウォーキング・デッド』シーズン8が、1022日に放送開始(日本は1023日よる10時放送開始)と発表されて、話題になっている。先月のサンディエゴ・コミコン・インターナショナルで、原作者のロバート・カークマンが語ったところによると、最新シーズンは、ひたすら戦いが続く、テンポが速くてアクション満載のものになるようだ。

 このコミコンでは、先月、撮影中に事故で亡くなったスタントマン、ジョン・バーネッカーに追悼が送られている。バーネッカーは、最後にバルコニーから落ちるという筋書きのファイトシーンをリハーサルしていたところ、足を踏み外して9メートルの高さからコンクリートの地面に落ちた。事故を受けて、製作は一時中断。現在、映画俳優組合(SAG-AFTRA)と労働安全衛生庁(OSHA)が、事故状況の捜査を行なっている。
 

コミコンに登場した『ウォーキング・デッド』原作者のロバート・カークマン(写真上右)
 
 だが、番組が直面しているトラブルは、これだけではない。2013年に、フランク・ダラボンと彼の所属事務所CAAがテレビ局AMCに対して起こした訴訟が、新たな局面を迎えたのだ。

 『ショーシャンクの空に』などの監督で知られるダラボンは、『ウォーキング・デッド』を企画化し、シーズン1第1話の監督を務めた最初のショーランナーだった。2011年のコミコンにも、第2シーズンについて語るべく出席したのだが、それから間もなくクビにされてしまう。ダラボンはもともと業界で尊敬される脚本家兼監督。この番組もちゃんと成功させてみせたというのに、なぜこんな展開になるのか、当時、首をかしげた人は少なくなかった。その部分が、今になってようやく少し見えてきたのだ。
 

『ウォーキング・デッド』シーズン1撮影中のフランク・ダラボン監督
 
 ダラボン側の要求は、 番組が彼に対して支払う料金のパーセンテージを上げてもらうこと。彼によれば、現状の数字は、相場と比べて少なすぎるということだ。その証拠として、同じくAMCの『ブレイキング・バッド』『MAD MEN マッドメン』などの番組がどれくらい支払っているかの数字を提示している。

 一方、AMCは、クビになってずいぶん経つダラボンが、番組がさらに成功したからといって、その恩恵を自分も受け取ろうとしていると反撃。「フランク・ダラボンは『ウォーキング・デッド』のクリエーターではありません。クリエーターは、ロバート・カークマンです。ダラボンとCAAは、もう十分、この番組から収益を得ていますし、これからもそれは続きます。契約書は映画の脚本ではないので、後になって書き換えることはできません。彼らがやろうとしているのは、そういうことです」と、訴状で述べた。また、そもそも彼がクビになったのは、彼の暴言や仕事仲間への態度にあったとし、その証拠として、当時のメールをいくつか提出もしている。メールの中で、ダラボンはFワードを何度も使い、気に入らなかったシーンについて、「全員、特に監督は、目を覚ませ!もっとちゃんとやらないなら、皆殺しにするぞ!そして死体を投げ捨ててやる」などと書いている。

 このままにらみ合いが続き裁判に行き着くのか、それとも和解がなされるのか。結論にたどり着くまでに、まだどんな真実が出てくるのだろうか。このドラマは、裏側も、同じくらいアクション満載なのだ。
 
 

猿渡由紀/L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、日本のメディアに寄稿。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。