【ほろ酔いシネマナビ・4杯目】共感できれば不思議ちゃん?一風変わった恋愛を学ぼう!

夏もしだいに遠のき、やがては人肌が恋しくなる季節が到来します。素敵な恋がしたい・・・!そんなことを考えている方もいらっしゃるのでは?恋愛は人間の永遠のテーマ。そして映画作品とも絶対に切り離せないジャンルですよね。自分にぴったりな相手はどこにいるのだろう?と、いつでも気になったりするものです。

今回はちょっと変わった生き方と恋愛をする人たちの、ぎこちなくもハッピーな物語をご紹介。ありふれた出会いや、真っすぐな感情で動く恋愛映画とは違う、この作品の世界を覗いてみましょう!

【アメリ(2001年)】

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女の子が好きだったもの、男の子が好きだったもの。そんな懐かしいものを思い出しながら、この作品を見始めてはいかがでしょうか?『アメリ』は、世の中とはちょっとズレた少女が「女性」になっていく過程を追ったストーリーであり、また、一人の青年の心の成長を描いた物語でもあります。優しく切なく、憤りもあり、しかし目に映る全てがキラキラ輝いていた子供時代を懐古しながら、存分に甘い世界に浸りましょう。

 

その前に・・・

 

〜今宵のお酒&おつまみ〜

チョコレート・プランターズ・パンチ と バジルのサラダ


 

チョコレート・プランターズ・パンチは、その名の通りチョコの味が染み込んだ甘〜いカクテル。ラム酒をベースにしているため、甘い香りが一層強まります。おつまみにはバジルとモッツァレラチーズのサラダ。バルサミコ酢を混ぜ、トマトの酸味を加えれば、アクセントのついた立派なお酒のお供になります。

味も見た目もオシャレなこの組み合わせは、甘くてキュート、かつスパイスの効いた今回の映画にピッタリです。

【辛い過去を持った2人の出会いは、奇跡的で魔法のよう!】

神経質な家族に育てられたアメリ(オドレイ・トトゥ)は、幼少期に、元軍医の父親(リュファス)の検診を受けると、普段とは違う状況に心臓がドキドキとしてしまい、体が弱いと診断されてしまいます。そのため、他の子供たちと遊ばせてもらえず、世の中と隔絶された生活を送っていました。さらに、元教師だった母親(ロレーラ・クラヴォッタ)を交通事故で亡くしてしまい、一人ぼっちの空想家になってしまった彼女。大人になってもその癖が抜けませんでしたが、ひょんなことから、人助けをすると自分が嬉しくなり相手も幸せにできるということに気がつきます。持ち前のイタズラ心と優しさで、人生を謳歌し始めるアメリ。そんな彼女が偶然に出会ったニノ(マチュー・カソヴィッツ)は、他人が捨てた証明写真を集めるのが趣味のちょっと変わった青年。彼は、子供の頃に孤独だったアメリと似ていて、大人になっても人間関係をうまく築くことができないのです。ニノの存在を意識し始めたアメリは、戸惑いながらも彼にコッソリと近づき、ニノもまた、謎めいた女・アメリとはどんな人物なのか気にし始め・・・。

2人の出会いや恋の始まりは一見子供だましのようですが、そこには「大人になりきれなかったもの同士」にしか分からない純粋な繋がりがあるのです。アメリが人助けをしていく過程はウィットに富んでいて、誰もが童心に返ってしまうような喜びを味わうことができます。それを最も理解してくれた相手がニノなのではないでしょうか。おかしな友達同士だった2人の関係は、複雑なパズルがやっと完成したときのように、やがて素晴らしい恋人関係へと発展していきます。

 

 

数々の映画賞を獲得した『アメリ』の舞台はパリのモンマルトル。パリジャンが集うオシャレの中心地です!画家ミヒャエル・ゾーヴァが描く絵画も、アコーディオンを主体にしているヤン・ティルセン提供の音楽も、いかにも「パリらしさ」を感じさせてくれます。アメリが働いているところは、モンマルトルに実存するカフェで、ジャン=ピエール・ジュネ監督も時々訪れるというスポット。彼女が「幸せが起こるのではないかしら?」と思いながら割っていくクリーム・ブリュレ。アダルトショップで働いているニノは実はものすごく純粋でシャイな青年であること。アメリのお茶目なイタズラに困惑する父親の表情。アパルトマンに住む老人の思い出・・・。全ての登場人物が持つ言葉、生活や心の動き、そして美しいビジュアルには全く嫌味がないのです。だからこの映画に「奇跡」とか「魔法」とか、現実離れした言葉を当てはめても、なんの違和感も残らないんですよね。そもそも主人公のアメリが普通の恋愛映画にはなかなか登場しないような、大人になってからも子供心を忘れず周囲を慌てさせる、チャーミングな「不思議ちゃん」なのですから。

【アナタも一風変わった自分だけの恋愛に挑戦!】

情熱的な恋もいいけれど、『アメリ』のように、個性的で自分にしかできない恋愛をしてみるのも楽しいはず。物語の登場人物みたいな相手だって、どこかに必ずいることでしょう。ステキな恋を求めている皆さま、どうかこの作品をお手本にしてみて下さい。カップルの方はお互い純真無垢な気持ちになるために、2人で見てみるのもいいかもしれませんね。あ〜私にもニノみたいな、個性的で素敵な男性が現れないかなぁ〜。いつになることやら、ですが・・・。

 

Text:芥川奈於

Illustration:のむらあい

芥川 奈於 (あくたがわ なお):動物イラストレーター、コラムニスト。映画、小説、テレビ番組などについて書く。「ねこ新聞」にイラストを連載。WEBサイト「しらべぇ」や「キノノキ」他にてコラムを連載中。新鋭作家との対談や本屋探訪、ユルいラジオも開始予定。曽祖父は芥川龍之介。