ファッションデザイナーとして確固たる地位を確立したトム・フォード。2009年には映画『シングルマン』で監督デビューも飾ったトムの最新作『ノクターナル・アニマルズ』が、主演にエイミー・アダムスとジェイク・ギレンホールを迎え、11月に公開されます。
本作は第73回ヴェネチア国際映画祭で審査員グランプリを受賞。さらに、事件解決には手段を選ばないボビー・アンディーズ刑事役を演じたマイケル・シャノンが、本年度アカデミー賞で助演男優賞にノミネート。暴力事件を起こした犯人チームのリーダー格であるレイ・マーカス役を演じたアーロン・テイラー=ジョンソンは、第74回ゴールデングローブ賞で助演男優賞を受賞しています。
(c)Universal Pictures
スーザン(エイミー・アダムス)は夫とともに、経済的には恵まれながらも心は満たされない生活を送っていた。ある週末、20年前に離婚した元夫のエドワード(ジェイク・ギレンホール)から、彼が書いた小説『夜の獣たち(ノクターナル・アニマルズ)』が送られてくる。彼女に捧げられたその小説は暴力的かつ、衝撃的な内容だった。才能のなさや精神的弱さを軽蔑していたはずの元夫。そんな彼が送ってきた小説の中に、それまで触れたことのない非凡な才能を感じ取り、再会を望むようになるスーザン。彼はなぜ小説を送ってきたのか。未練として残る愛からか、それとも復讐か――。
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ファッションとアートが織りなす美しい世界
衣装を手がけたのは、歌手マドンナの衣装を担当している衣装デザイナーのアリアンヌ・フィリップス。アリアンヌは今回トム監督とは2度目のタッグで、監督のデビュー作『シングルマン』において英国アカデミー賞の衣装デザイン賞にノミネートされています。アリアンヌは「ファッションデザイナーのトム・フォードではなく、映画監督トム・フォードと仕事をしました」と語っており、監督の「ブランディングによって観客が映画に入り込めなくなるのを避けたい、映画は服を売るための宣伝ではない」という考えのもと、この映画では監督のファッションブランド「トム・フォード」は一切使用しなかったのだそうです。
劇中に登場する不気味で繊細なアート作品には、有名な画家や写真家の作品を数多く使用。「すべてのアートワークはオリジナル作品がいい」という意向に沿って、中にはトム・フォード監督個人のコレクションも含まれています。美術を担当したのは、CM、ミュージックビデオ、テレビ番組、映画などさまざまな作品を手がけるシェーン・バレンティーノ。彼は本作で、英国アカデミー賞プロダクションデザイン賞にノミネートされています。
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3つの世界が同時に進行!
ロサンゼルスの豪邸に住み、一見恵まれているように見えるスーザンですが、出張が多く忙しい夫とは冷めきった関係。20年前に離婚した元夫のエドワードから小説『夜の獣たち(ノクターナル・アニマルズ)』が届き、複雑な胸中のまま小説を読み進めます。
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小説はテキサスが舞台。小説の主人公トニー(スーザンのイメージするトニーは、元夫エドワードの姿)が妻と娘をある事件で失い、担当の刑事ボビーとともに凶悪犯たちを探し出すという流れのものでした。ショッキングな描写の連続に時として頭を抱えながらも、スーザンは小説の世界を鮮明にイメージします。
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しかし一方でスーザンは、話を先に読み進めながらエドワードとのニューヨークでの出会いや、数々の思い出を懐かしんでもいました。そこにはエドワードとの幸せだった時間があったのです。現実と小説、そして思い出が交錯する中、スーザンが最後に目撃するのは愛か、それとも復讐か?心をざわつかせる、極上の恋愛ミステリーが誕生しました。
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試写会の感想
ファッションに造詣の深いトム監督だからこそ描けたであろう、独特の世界観が印象的なこの映画。作品を彩るアートワークやファッションにもこだわっており、「愛と復讐の美しいミステリー」との触れ込みに偽りはありません。
ロサンゼルス(現在)、テキサス(小説)、ニューヨーク(過去)と3つの世界が交差しますが、別々の時間が進行しているにも関わらず、非常に完結にまとまっています。そのため頭が混乱することもなく、どの世界にもすっきりと入り込むことができました。
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そしてなんといっても、キャスト陣の演じ分けがすごい!主人公スーザン役のエイミー・アダムスは20代と40代の頃を演じ分け、スーザンの元夫エドワード役を演じたジェイク・ギレンホールに至っては、思い出の中に登場する20代のエドワードと同時に、40代の小説の主人公トニーを一人二役で演じています。
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個人的に、大好きな映画『お買いもの中毒な私!(2009年)』の主人公を演じているアイラ・フィッシャーが出演しているということで、前々から気になっていたこの作品。恋愛・結婚・人生などについて最初から最後まで考えさせられ、お気に入り作品のひとつに加わりました。トニーの妻ローラ役で出演していたアイラも、ラブコメディーである『お買いもの中毒な私!』で見せた無邪気なキャラとは違い、シリアスな役どころを艶やかに演じていました。
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かつてない衝撃的なオープニングから始まり、そして最後まで展開が読めません。ジャンルは決してホラーではないのですが、感情を揺さぶる演出が要所に差し込まれ、全体的にスリリングな雰囲気に仕上がっているため、終始ドキドキしっぱなしでした。
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果たして、元夫から送られてきた小説は未練?それとも復讐・・・?タイトル『ノクターナル・アニマルズ』の表すものとは・・・?恋愛要素だけでなくミステリーとしても面白く、独身既婚問わず多くの女性の共感を集めることでしょう。洗練された衣装や美術品にも注目しつつ、結末を予想しながらご覧ください!きっと、想像を超えたラストが待ち受けているはずです。
予告編
監督・脚本:トム・フォード
出演:エイミー・アダムス、ジェイク・ギレンホール、マイケル・シャノン、アーロン・テイラー=ジョンソン、
アイラ・フィッシャー、アーミー・ハマー/ローラ・リニー、アンドレア・ライズブロー、マイケル・シーン
原作:「ノクターナル・アニマルズ」(オースティン・ライト著/ハヤカワ文庫)
2016年/アメリカ/116分/PG-12
ユニバーサル作品
配給:ビターズ・エンド、パルコ
映画『ノクターナル・アニマルズ』は11月3日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほかにて全国ロードショー!(公式サイトはこちら)