『ダークナイト』でアメリカン・コミック映画の新開地をひらいたクリストファー・ノーラン監督。新作は、第二次世界大戦中ドイツ軍の圧制によってダンケルクの海岸に追い込まれた英仏軍を、チャーチル首相率いる英国が民間の力をかりて救出したダイナモ作戦をテーマにした大作『ダンケルク』だ。すでに封切となった欧米では大ヒットとなっている。
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海、空、陸という3つのアングルから、40万人近い兵士がいかに救出されたのかを、カメラは3人の若い兵士を中心に追いながら描いていく。実際に当時の兵士の多くは20歳そこそこの若さだった。それを新鮮かつリアルに演じるのが、フィン・ホワイトヘッド、ハリー・スタイルス、ジャック・ロウデンの3人。この3人に直撃インタビュー。ベテランのケネス・ブラナーやマーク・ライアンス、トム・ハーディーなどに混じり熱演する。
初の演技経験は驚きの連続!
3人とも初めての大作だそうですが、初の大作出演の感想は?
取り組むすべてが初体験だったけど、すぐに環境に慣れることができたよ。初日には大きなセットに圧倒されたし、スピット・ファイア(イギリスの戦闘機)や何千人ものエキストラが参加するロケ撮影に足を踏み入れた時の驚きはこれまた凄かったけれど、それもすぐ慣れてしまった。今振り返ってみれば、とてもクレイジーなことだよね。「わー、スピット・ファイアが飛んでる!」って感じた最初の感激も、毎日見ているうちに「またスピット・ファイアが飛んでるなぁ」くらいになって(笑)。
ハリーは正真正銘、初めての演技だそうですが、想像していた通りの体験でしたか?
いや、初めて撮影現場に足を踏み入れたときは、目の前で起こっていることすべてに衝撃を受けたよ。一番驚かされたことはやっぱり、制作規模の大きさかな。そういった環境って、まったく想像もつかなかったから。刺激的だったし、感動したね。
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撮影現場の風景は?
クリストファー・ノーラン監督との仕事はどうでしたか?
常にそばにいてくれるので、自然な演技ができたよ。力み過ぎることもなく、初めての演技での初めての台詞でも、すらすら出てきた。撮影初日の思い出といえば、「おめでとう。今、初のクロースアップの撮影が完了したよ!」と監督に言われたことかな。気が付かないうちに自分がそんな大仕事をこなせたことに感激した。いや、目に砂が入ってしまって涙が出たんだよ(笑)。
僕も似たような体験をした。あるとき監督が僕のトレーラーにやってきて、「アイマックスだとすべてを見れるんだよ~」って言ってきたんだ(笑)。
操縦のふりをしているわけじゃなくて、本当に飛んだんだよ。カレーの空港を離陸し3、4回ドーバー海峡を渡った。実際のパイロットがやったようなことが体験できて光栄だった。操縦したのはヤックというロシア製の2人乗りの飛行機で、スピット・ファイアーにとても似ている。管制官と連絡をとったりもした。何しろ一緒に飛んでくれた操縦士はカメラマンと兼任だったから(笑)。とても忙しくて、だから僕もいろいろ助けたんだ。隣では本物のスピット・ファイアが飛んでたし、リアルな体験だったよ
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注目!キャストの印象に残ったシーン
海岸で担架を持って走るシーンかな。スタントの人を実際に運んで、何度も何度も撮りなおしたんだ。アングルを変えながら撮ったんだけれど、走っては止まり、また走っては止まり。なんだかんだ1キロ以上担架を担いで走ったと思う。しまいには膝がすごく痛くなってガクガクしてきたよ。曲がった木の板の上を通るんだけれど、そこにもカメラがあったのを憶えてる。
僕は泳ぐシーンだな。大きな船が近づいてくる場面。色んな方向から、銃弾の音やら叫び声が聞こえて、カメラがどこにあるのか、何が何だかまったく分からなくなった。カメラが回っているのかすら見失ったよ。とにかく無我夢中の撮影だった。
僕の場合はパイロットだったので海のシーンはなかったな。けれど海岸にいる何千人もの人を見下ろして、彼らの命が空の上にいる数人、僕らにかかっていたんだと思うと空軍兵の責任の重さを感じた。飛行機の操縦に関しても、狭い席に座るのがとっても窮屈で、おまけにすごくノイジーで、本当に大変だった。
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歴史映画に携わるということ
今回の体験で、第二次世界大戦に対する考え方は変わりましたか?これまで学校で習ったこととは違う点で。
学校でダンケルクについては習うので、皆が知っている。ただ二次大戦については他の箇所のほうに重きが置かれていて、詳しい事は知らなかった。友達のなかには知らない人もいて、ダンケルクについて話したらとてもショックを受けていたようだった。兵士たちがいかに無防備な状況に置かれていたのかを、特に痛感したよ。どこまでも広大な海岸線が続き、まったく隠れ場がないんだ。夜にはそんな砂浜で寝なければならない。そこに爆撃が襲ってくるんだ。あのシーンでは自分の中にあるサバイバルの本能が湧いてきたね。
これまで一人ひとりの兵士がどんな体験をしたのかなんて、全く知らなかった。だから戦場に立つことがどんなことなのか、理解してるとは言えなかった。この映画に出演して、彼らが経験したのと近い状況に置かれ、それがいかに苦痛な体験であったのかを想像しようとした。それは兵士としてのすごく小さな体験でしかないと思うけれど、まあ自分なりに何かを感じることができたよ。
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フィン・ホワイトヘッド
ロンドン生まれの21歳。ミュージシャンを父に持つ。子供の頃から演技を始め、イギリスのテレビに出演した。『ダンケルク』で大役に抜擢されたのを機に、長編映画の主演に抜擢が続く期待の新人。
ハリー・スタイルス
言わずと知れたイギリスのボーイズバンド、ワン・ダイレクションの人気メンバー。ソロとしてもデビューした。英国ウスタシャー生まれの23歳。
ジャック・ロウデン
英国エセックス州生まれスコットランド育ちの27歳。10歳の時に演劇学校に入学し、学生時代も演技を続ける。テレビ、映画、演劇やミュージカルなど幅広い分野で活躍しており、英国舞台俳優に贈られるオリビエ賞を受賞している。新作はスミスのモリッシー役を主演する『England is Mine』。弟はエジンバラが輩出したビリー・エリオットとも称される、有名バレリーナのカラム・ロウデン。