『エイリアン:コヴェナント』絶賛公開中!これさえ読めば完全攻略できる『エイリアン』シリーズ

ライター山田宗太朗 ライター

文学、音楽、映画など、おもにカルチャー系の媒体で記事を書いたりインタビューをしたりしています。夜はバーテンダー。 Twitter:@ssafsaf

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『エイリアン』シリーズの最新作『エイリアン:コヴェナント(2017年)』が、現在絶賛公開中です。シリーズ第1作の『エイリアン』が公開されたのが1979年。それから約40年にわたり、続編やスピンオフなど、さまざまな『エイリアン』関係作品が生まれてきました。
 

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そこで今回は、『エイリアン』各シリーズの大まかなストーリーと注目ポイントを簡潔にまとめてみました。この記事を読めば、これまでの作品を見ていなくても、最新作『エイリアン:コヴェナント』を十分に楽しめるでしょう!

そもそも『エイリアン』とは?

『エイリアン』の内容を一言で説明すれば、「宇宙(あるいは宇宙船内)で、人間がエイリアンに次々と襲われる映画」です。この映画の世界的な大ヒットにより、「alien(エイリアン、異星人)」というワードが世界中に浸透しました。皆さんも、エイリアンと聞けば映画シリーズに出てくるモンスターのビジュアルを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。

映画のモチーフになったのは、H・R・ギーガーというスイス人の画家による『ネクロノームIV』という下記の絵。監督のリドリー・スコットがこの絵を見て気に入り、ほぼそのままの姿で登場させたのだそう。
 

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映画『エイリアン』シリーズには、今回の最新作以前に主に5つの作品があります。『エイリアン1』から『エイリアン4』までの作品と、その前日譚(ぜんじつたん)となる『プロメテウス(2012)』です(『エイリアンvsプレデター』シリーズや一連のゲーム作品、ノベライズ作品などは、本記事では番外編とみなし省略)。

リドリー・スコット監督によるSFホラーの『エイリアン』


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まずはシリーズ第1作の『エイリアン(1979年)』。監督はリドリー・スコット、のちに『ブレードランナー(1982年)』、『テルマ&ルイーズ(1991年)』、『ハンニバル(2001年)』、『ブラックホーク・ダウン(2001年)』『オデッセイ(2015年)』といった名作を手掛けることになる巨匠です。
 


20世紀フォックス映画公式Twitterアカウント(@foxjpmovie)より
 
主演は当時ほぼ無名だったシガニー・ウィーバー。本作のヒットにより第4作まで主演を務めることとなり、その後も『アバター(2009年)』などの大作映画に出演している女優です。 『エイリアン』は、リドリー・スコットとシガニー・ウィーバーの名を世界的に有名なものにした作品でもありました。

物語は、地球へ帰還途中の宇宙船が何者かからのメッセージを受信し、調査をするところから始まります。着陸した星(LV-426)で奇妙な建物を発見し、その中で異星人の死骸と思われるものと遭遇。すると、調査を行う乗組員のケイン(ジョン・ハート)の顔に、死骸と思われた生命体(フェイスハガー)が突然貼り付きます。他の乗組員たちは、気を失ったケインを宇宙船に運び、顔から生命体を引きはがそうとしますが、分泌している粘液が強い酸性でうまくいきません。しばらくすると、フェイスハガーは消え、ケインは意識を取り戻します。これで一安心、と思ったのもつかの間、ケインの胸から血が噴き出し、体を突き破ってエイリアンの子どもが誕生します。逃げたエイリアンを宇宙船内で探すのですが、短時間のうちに急成長し巨大になったエイリアンは乗組員たちを次々と襲っていく・・・というストーリー。
 

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『エイリアン』は、リアリティーのあるSF作品ですが、ホラー映画としての要素が強いです。というのも、エイリアンはその全貌をなかなか見せません。体の一部や影のみを画面に映したり、おぞましい口の部分だけをアップで映したり、静寂の中でほんのわずかに響く音を強調するなどして、見る者の恐怖をあおるのです。「アッ!」と声をあげてしまうかもしれないので、恋人と見る際などには注意が必要です。

また細かく作り込んだセット、スモークの多様性、照明の工夫など、美術面にも目を見張るべきものがあります。ちなみに、エイリアンの造形自体には性的なメタファーが込められているようです(そういう意味ではむしろ、デート向きの映画なのかも)。

ジェームズ・キャメロン監督による戦争アクションの『エイリアン2』


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シリーズ2作目となる『エイリアン2(1986年)』。監督はジェームズ・キャメロンで、『ターミネーター(1984年)』の大成功により、続編の監督に抜擢されます。本作の成功後も『ターミネーター』シリーズや、『タイタニック(1997年)』、『アバター(2009年)』など、一時代を築くような名作を生み出し続ける巨匠となりました。

『エイリアン2』では、前作で唯一の生存者となったリプリー(シガニー・ウィーバー)の乗った脱出船が発見され、救出されるところから物語が始まります。

冷凍睡眠から目覚めたリプリーは、57年間も宇宙を漂っていたことを知らされます。そしてなんと、宇宙船を爆破した責任を追及されるという展開に。エイリアンとの遭遇については誰にも信じてもらえません。リプリーがエイリアンと遭遇したと主張する星(LV-426)はテラフォーミング(惑星地球化)の対象となり、すでに多くの入植者たちが居住しているとのこと。リプリーは航海士としての資格を停止され、すっかり精神障害者扱いされてしまいます。しかし突然LV-426との交信が途絶え、調査のため海兵隊が派遣されることに。アドバイザーとして同行を求められたリプリーは海兵隊とともにLV-426に向かいますが、彼らを待ち受けていたのは、やっぱり・・・。
 

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前作はホラー要素の強いSF映画でしたが、『エイリアン2』は、ベトナム戦争を連想させるような戦争アクション映画へと大変貌をとげました。どこから襲ってくるかわからないエイリアンの群れ。エイリアン遭遇のトラウマにさいなまれるリブリーがLV-426へ舞い戻るのは、まるで戦場で心に傷を負った兵士が再び戦場へ向かい、トラウマを克服しようとするような構図です。

DVDの完全版は154分とシリーズ最長のストーリーですが、最初から最後まで気が抜けない展開で、冗長な感じはまったくありません。そのことからも『エイリアン2』はファンの間で非常に人気が高く、シリーズ最高傑作と言われています。また、ジェームズ・キャメロン監督の最高傑作と評価する人も多いようです。2009年にイギリスのエンパイア誌が発表した「史上最高の続編映画50本」では、見事1位を獲得しています。

デビッド・フィンチャー監督による宗教映画の『エイリアン3』


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シリーズ3作目『エイリアン31992年)』。監督はデビッド・フィンチャーで、のちに映画『セブン(1995年)』、『ファイト・クラブ(1999年)』、『ソーシャル・ネットワーク(2010年)』、『ゴーン・ガール(2014年)』など、またドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段(2013年〜)』を監督することになる巨匠です。本作はデビッド・フィンチャーが初めて監督を務めた映画作品でもあります。

『エイリアン3』は、あらすじを説明するのが非常に難しい作品です。というのも、冒頭で明かされる設定が、これまでシリーズを見てきた人にとってかなりショッキングなもので、どう説明しても盛大にネタバレするからです。もし、『エイリアン』シリーズをこれから見てみようと思っていて、ネタバレを避けたいのであれば、ここから先は読まない方がいいかもしれません。

前作でLV-426を殲滅(せんめつ)させ、冷凍睡眠した隊員を乗せて地球に帰還中の宇宙船は、謎の事故を起こします。宇宙船はある惑星に不時着。そこは数十人の囚人が戒律の元に静かに暮らす囚人惑星で、囚人たちは核廃棄物容器用の鉛を作る仕事に従事していました。

宇宙船は囚人たちに回収されますが、不時着時の事故によって、リプリーを除く乗組員は全員死亡。さらに、宇宙船に潜んでいたフェイスハガーによってエイリアンが生まれてしまいます。実はLV-426を脱出する際、エイリアンが宇宙船内に卵を産み落としていたのであり、謎の事故はフェイスハガーが起こしたものだったのでした。リプリーは囚人たちと団結してエイリアンを倒そうとするのですが・・・。
 

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さて、さすがはデビッド・フィンチャー、初監督作品にして『セブン』などにも通じる陰鬱で絶望的な映画を作りました。『エイリアン』『エイリアン2』と続けて見てファンになった人は、前作のメインキャラが1人を残して全員死ぬという冒頭にショックを受けること間違いなし。あんなに頑張って生きのびたのに・・・。しかも死体をはっきり見せます。超むごい・・・。

『エイリアン3』では、エイリアンは人間ではなく犬に寄生します。そのため、産まれてくるエイリアンは四足歩行となり、動きがさらに気味の悪いものへ。高速で天井を走り回る際には、カメラがエイリアン目線に切り替わることもあり、とてもスピード感があります。

SFホラー、戦争アクションと変化してきたエイリアンシリーズは、今作では「宗教」をテーマにしています。キリスト(受難者)としてのリプリーと、悪魔としてのエイリアンが対比されています。また、エイリアンを確保して生物兵器として利用したい企業の面々も登場するなど、シリーズ全体を理解するための鍵となる情報が散りばめられています。

全体としてかなり評価が分かれそうな一作ではあるのですが、ラストシーンはシリーズ中もっとも印象的で、記憶に残ります。見ながら思わず「ええー!」なんて声が出てしまうかも。これにて『エイリアン』シリーズは完結。

と思いきや・・・。

ジャン=ピエール・ジュネ監督によるヒューマンドラマの『エイリアン4』


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4作『エイリアン41998年)』。監督はフランスのジャン=ピエール・ジュネ。これまでの3監督に比べれば知名度は低いですが、のちに『アメリ(2001年)』や『ロング・エンゲージメント(2004年)』を作る監督です。本作でハリウッドデビューしました。

前作『エイリアン3』にて、自ら命を絶つことで体内に宿ったクイーン・エイリアンとの戦いに終止符を打ったリプリー。それから200年後、リプリーは連合軍の研究者たちの手によってクローンとして再生されます。目的は、体内に宿ったクイーン・エイリアンを摘出し、エイリアンを繁殖させて軍事利用すること。連合軍はエイリアン繁殖に必要な材料(人間)を手に入れるため、宇宙貨物船ベティ号の乗組員と取引します。その結果、12匹のエイリアンが生まれます。しかし、繁殖したエイリアンは研究者や軍人たちを次々と殺し、脱走。リプリーは再びエイリアンに立ち向かう・・・、というストーリー。
 

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原題は『Resurrection』で、「復活」を意味します。つまり、前作で死んだリプリーとエイリアンの復活物語ということです。

『アメリ』の監督だと思って今作を見ていると、何発かカウンターパンチを食らいます。それほどにむごいシーンがあり、おそらくむごさで言うならデビッド・フィンチャーによる前作をしのいでいるでしょう。これまでのシリーズと同じく舞台は宇宙船の中での出来事ですが、本作には水中のシーンがあるのも印象的です。

クローン再生の過程においてリプリーが得た「ある特徴」が新たな展開を呼び、物語は思わぬ方向へと進みます。そして中盤と後半、『エイリアン』シリーズでもっとも悲しいと言えるシーンが2つあります。『エイリアン』や『エイリアン2』ほどの高評価を得ているとは言いがたい本作ですが、この2つのシーンがあまりにも胸を打つ仕上がりとなっているため、『エイリアン4』を推すファンも多いようです。

SFホラー、戦争アクション、宗教映画という変遷をたどってきた『エイリアン』シリーズ。『エイリアン4』は、ヒューマンドラマと言えるのかもしれません。

リドリー・スコット監督によるモンスター・アクション映画(?)の『プロメテウス』

 
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5作『プロメテウス(2012年)』。これは第1作『エイリアン』の前日譚(ぜんじつたん)にあたる作品です。監督は第1作を担当したリドリー・スコット。

2089年、考古学者であるエリザベス・ショウ(ノオミ・ラパス)とチャーリー・ホロウェイ(ローガン・マーシャル=グリーン)は、地球で発見された古代遺跡から、時代も場所も異なる他の古代文明に通じる壁画を発見します。そこにはある星座が描かれていました。分析の結果、人類の起源という謎の答えとなる惑星(LV-223)が存在する可能性が浮上。2093年、科学者を中心に編成された調査チームが星座の示す場所を目指し、やがてとある建造物にたどり着き・・・というストーリー。
 

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前作『エイリアン4』の公開から14年たっていることもあり、映像の迫力が大幅にパワーアップしています。キリスト教のモチーフが散りばめられていて、宗教映画に近い雰囲気もありますが、むしろスペースSF、あるいはモンスター映画といった方がしっくりくるでしょう。凄惨なシーンもいくつかあります。『エイリアン』シリーズを見てきていまさら「血を見るのが無理」という人は少数派でしょうが、中盤のとあるシーンは、苦手な人はとことん苦手かもしれません。ストーリーの流れ上、考古学的な要素もあり、細部にまでこだわったセットは映画『ハムナプトラ/失われた砂漠の都(1999年)』を彷彿とさせます。

ぜひ最新作を劇場で!

『プロメテウス』には、皆さんが知るような完全体のエイリアンは出現しません。内容的に謎を多く残した映画でもあり、かなり賛否の分かれる作品になりました。しかし、本作でのさまざまな謎は、続編への伏線に過ぎないことが判明しました。そう、『エイリアン:コヴェナント』は『プロメテウス』の続編であり、前作で残った謎を解くためのカギともなる映画。ぜひ劇場で、40年の歴史を背負った『エイリアン』シリーズ最新作の恐怖と興奮を体感してください!