From LA: ハリウッドのハロウィーンは、恐怖のピエロで大賑わい!

JALEE編集部

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 ハロウィーンが子供だけのイベントだったのは、昔のこと。子供たちが「Trick or treat」と言って他人の家をノックするのは危険なのではないか、また、子供たちがもらったお菓子を食べすぎると肥満になるのではと親たちが頭を悩ませる中、大人たちの間では、この日の楽しみ方が、ますます広がっている。

 ハリウッドにとっても、ハロウィーンは新たなマーケティングを仕掛ける上で重要な日だ。毎年、ハロウィーンの直前にはホラー映画が公開されるのが恒例で、今年の場合は『Happy Death Day』と『ジグゾウ』が公開された。だが、特筆すべきはスティーヴン・キング史上最恐小説の映画化『IT/イット“それ”が見えたら、終わり。』(日本公開11月3日)だ。この映画は9月に北米公開され、すでに8週目を迎えているのだが、ハロウィーンにかけてさらにスクリーン数を増やし、デビュー週末よりも多い4,148スクリーンに拡大したのである。4,000以上というのは、ハリウッドの超大作でもめったにない数。『IT〜』はすでに北米だけで3億ドル以上を売り上げ、ホラーのジャンルでは史上最高記録を打ち立てた。世界興収は6億5,000万ドル以上。製作予算は3,500万ドルなので、ぼろ儲けである。ここで最後にもうちょっと稼ごうかという、ワーナー・ブラザースの余裕の戦略だろう。
 

映画『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』予告編 ワーナー ブラザーズ公式YouTubeチャンネルより

 
 バーガーキングも、この映画の大人気に便乗している。店舗数でマクドナルドに劣るこのハンバーガーチェーンは、ハロウィーンの夜、怖いピエロの変装をしてきた最初の500人に無料でハンバーガーをプレゼントするというキャンペーンを展開。夜の道を自転車に乗っている少年が、恐ろしいピエロたちに追いかけられるというそのテレビスポットも、まさに『IT〜』を意識している。ただ、最後に少年がバーガーキングに逃げ込み、そこでロナルド・マクドナルドに似たピエロがバーガーキングの看板商品であるバーガーを注文するところは、ライバルへの挑戦と言える。
 

Zombie WHOPPER®プロモーション動画 バーガーキング フランス公式YouTubeチャンネルより
 
 もうひとつのホラーのヒット作『ストレンジャー・シングス』も、ユニークなキャンペーンを展開した。Netflixがストリーミング配信するこのドラマは、昨年のデビュー当時から大好評を集めている。お待ちかねの第2シーズンは、ハロウィーン直前の9月27日に配信開始されたところで、Netflixはライドシェア会社Lyftと組み、27日と28日の2日間、午後4時から9時までの間、「ストレンジ・モード」のオプションを追加した。LyftはUber同様、スマフォで車を呼び出すシステムだが、配車をリクエストする時に「ストレンジ・モード」を選ぶと、車の中で奇妙なことが起き、『ストレンジャー・シングス』の世界が体験できるというものだ。
 

Lyftさん(@lyft)がシェアした投稿


Lyft公式Instagramアカウント(@lyft)より
 
 このキャンペーンで、具体的にどれくらいLyftの売り上げが上がったのかはわからない。だが、ライバルのUberがスキャンダルでイメージダウンする中、客に、この会社は楽しそう、ユーモアがわかる、という印象を与えられたのだとしたら、それだけでも成功である。これらに想を得て、来年はどんな会社が、どんな面白いことをやってみせてくれるだろうか。

 

猿渡由紀/L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、日本のメディアに寄稿。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。