クリスマスまで、あと1ヶ月弱。人種も宗教も多様なアメリカとはいえ、クリスマスは、やはり年で一番大きな休日だ。日本ではなぜか「恋人同士とイブを過ごす日」になってしまったが、アメリカではむしろ日本の正月のように、家族が集まって一緒に過ごす日。毎年、テレビでは必ず映画『素晴らしき哉、人生!(1946)』が放送される。今でも史上最高のクリスマス映画として揺るぎない地位を保つ本作にはかなわないとわかっていても、ハリウッドは毎年この時期になると、新しいクリスマス映画を公開する。日本には同じ意味でのクリスマス文化がないせいか、キャストが豪華だったりアメリカで話題になったりしても、近年は、それらの多くが日本公開されていない状況。今年も同じだ。
クリスティン・ベル公式Instagram(@kristenanniebell)より
今年のクリスマス映画は、3本。ミラ・クニス、クリスティン・ベルらが主演の『A Bad Moms Christmas』、マーク・ウォールバーグとウィル・フェレルが主演の『Daddy’s Home 2』、そしてダン・スティーヴンスとクリストファー・プラマーの『The Man Who Invented Christmas』だ。最初の2本はコメディで、ヒット作の続編。いずれもクリスマスで親がやってくるという設定で、女性版と男性版と言ってもいい。どちらも成績は、まずまずと言ったところ。一方、『The Man Who Invented Christmas』は、チャールズ・ディケンズ(ダン・スティーヴンス)が小説『クリスマス・キャロル』を生み出すまでを描く、フィクションと想像の混じった作品で、rottentomatoes.comで80%と、高い評価を得ている。ちなみに昨年は、黒人キャストの『Almost Christmas』、ジェニファー・アニストンらが出演する『Office Christmas Party』などが公開されている。
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しかし、タイトルからして「クリスマス」となっていない映画には、日本でも公開され、ヒットした作品がある。たとえば、『ダイ・ハード(1988)』。物語の舞台は、クリスマスイブのL.A.だ。『ホーム・アローン(1990)』も、クリスマス休暇を家族一緒にパリで過ごそうと思ったら、末っ子が置いていかれてしまったという物語である。前の年に『スピード』でブレイクしたサンドラ・ブロックが映画スターとしての地位を確実なものとした『あなたが寝てる間に(1995)』も、クリスマスという設定。恋愛映画の王道とされる『ラブ・アクチュアリー(2003)』は、言うまでもない。
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そんな中で、筆者の最高のお気に入りは、ナンシー・マイヤーズ監督の『ホリデイ(2006)』。L.A.に住む女性(キャメロン・ディアス)と、ロンドンに住む女性(ケイト・ウィンスレット)が、インターネットを通して、クリスマスの間だけ家を交換する「ホームエクスチェンジ」を行い、それぞれに新しい恋に出会うというロマンチックコメディ。何度見ても、わかっているのに、同じ場所でほろりと泣いてしまう。 押し付けられる感じなくクリスマス気分を味わいたい人はもちろん、結婚して以来、半引退気味のディアスが恋しいファンにも、これは是非おすすめだ。

猿渡由紀/L.A.在住映画ジャーナリスト
神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、日本のメディアに寄稿。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。