LAから大胆予想!2018年アカデミー賞の行方はいかに?

JALEE編集部

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 先月末から発表されはじめた数々の映画賞で、今のところリードしているのは、ゲイの恋愛映画『君の名前で僕を呼んで』(日本公開2018年4月予定)、娘を殺された母の警察に対する屈折した復讐を描く『スリー・ビルボード』(日本公開2018年2月1日)、そして高校生の複雑な心理をコミカルに描く『Lady Bird』だ。夏の公開時に「オスカーの可能性十分」と騒がれたクリストファー・ノーランの『ダンケルク』は、現状、影も形もない。だが、ハリウッドのオスカー予測ジャーナリストによると、最も作品賞を受賞しそうなのは、今も変わらず『ダンケルク』ということなのだ。

 Goldderby.comによる、27人のエキスパートの予測最新版がアップされたのは、アメリカ時間13日。オスカー予測で重視される、米映画俳優組合賞(SAG)のノミネーション結果が出た後だ。SAGに候補入りもしなかった作品がオスカーで作品賞をとったことは、1996年の『ブレイブハート』以来、一度もない。そして『ダンケルク』は、SAGのノミネーションにかすってもいない。
 

映画『ダンケルク』主演のフィオン・ホワイトヘッド(中左)とワン・ダイレクションのハリー・スタイルズ(中右)
 
 それでも、エキスパートによる作品賞予測の1位は、今も『ダンケルク』。2位は、やはりSAG候補にまるで入らなかった、スティーブン・スピルバーグの『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』(日本公開2018年3月30日)。3位は『Lady Bird』、4位は『Call Me by Your Name』、5位はSAGで複数部門に候補入りしたことでランクアップした『ゲット・アウト』だ。統計的にいうとフロントランナーのはずの『スリー・ビルボード』は、その下の6位である。

 もちろん、予測は予測であり、実際にどうなるのかは、誰にもわからない。アカデミー賞授賞式は3月4日で、まだ2ヶ月半も先だ。昨年は『ラ・ラ・ランド』が、オスカー候補発表まで圧倒的にリードしていたのに、ノミネーション発表後から投票締め切りの間に、トランプが正式に大統領に就任し、世の中が本当に暗くなったことを受けて、『ムーンライト』が勝ち取っている。もちろん、『ムーンライト』はすばらしい作品で、オスカーを取るべきではあるが、そんなふうに世の中のムードで結果が変わることだって、十分あるということだ。
 

映画『ダンケルク』で監督を務めたクリストファー・ノーランは映画『バットマン』シリーズの監督として有名
 
 筆者も、『ダンケルク』は伝統的にオスカーが求めるものをすべて満たしていると思う。スケールが大きく、歴史物で、かつ、技術面でも画期的なことをやっている。それに、監督のクリストファー・ノーランには「そろそろこの人に」の要素も働くことが考えられる。『ディパーテッド』でマーティン・スコセッシが、『エリン・ブロコビッチ』でジュリア・ロバーツが、『レヴェナント/蘇えりし者』でレオナルド・ディカプリオが取った時のように、すでに賞をもらっていてもいいのにもらっていない人に、「今度こそ」という場合だ。

 筆者個人的には『スリー・ビルボード』の作品賞を予測しているし、願ってもいるが、『ダンケルク』が取ることになっても、異議はない。それを言うなら『ゲット・アウト』が取ったとしても異議は全然ない。実は『ゲット・アウト』は、個人的な今年のベスト3に入るお気に入り映画なのである。だが、ホラーが作品賞を取ることは、お堅いアカデミーでは、さすがにまだありえないだろう。もしそれが起こったら、アカデミーを見直して、本気で敬意を贈る。

 

猿渡由紀/L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、日本のメディアに寄稿。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。