FOX系ケーブルチャンネルのFXが、訴訟への対応に忙しい。昨年、実話にもとづくドラマ「フュード/確執 ベティ vs ジョーン」をめぐる訴訟が起きたばかりなのに、最近になって、やはり実話もののドラマ「Trust」(写真一番上)も、裁判沙汰を招いたのだ。
101歳の大女優が、ハリウッド女優の確執ドラマを訴えた!
「フュード〜」は、ベティ・デイヴィス(スーザン・サランドン)とジョーン・クロフォード(ジェシカ・ラング)というハリウッド大女優の対立を描くもので、クリエーターは「Glee/グリー」「アメリカン・ホラー・ストーリー」のライアン・マーフィー。ブラッド・ピットもプロデューサーに名を連ねる。問題になっているのは、キャサリン・ゼタ=ジョーンズが演じる女優のオリヴィア・デ・ハヴィランドの描かれ方。デイヴィスとクロフォードはすでに亡くなっているが、ハヴィランドは現在101歳で、番組での自分の描かれ方が正しくないと、FXとマーフィーを訴えたのだ。
オリヴィア・デ・ハヴィランド ファンページInstagram(@dame_olivia_de_havilland)より
ライアン・マーフィーを訴えた101歳の名女優、オリヴィア・デ・ハヴィランド近影
アカデミー賞作品の監督&脚本家の誘拐ドラマですら、遺族から訴訟!
一方で「Trust」は、1973年に起きたJ・ポール・ゲティ3世の誘拐事件がテーマ。先月25日に放映開始になった10話のミニシリーズだ。監督はダニー・ボイル、脚本はサイモン・ボーフォイの「スラムドッグ$ミリオネア」コンビ。だが、ゲティ3世の妹は、番組はゲティ一家の名誉を毀損するものだとし、放映の差し止めを要求した。これと同じ話は、つい最近、リドリー・スコット監督が「ゲティ家の身代金」(5月25日日本公開予定)で扱っている。この映画は、ゲティ1世を演じるケビン・スペイシーにセクハラ容疑が浮上したことで、公開直前に彼の部分をクリストファー・プラマーで撮り直したことが大きな話題となった。もちろん、セクハラ容疑者が出ていることで客を遠のけたくないというのが一番のモチベーションだったのだが、無理をしてでも年末の北米公開予定日を守ったのは、このFXドラマが3月に控えていたこともあったと思われている。スコット版は、訴訟もなかった代わりに、思ったほど興行成績を稼げずに終わった(しかし、9日間ほどしか仕事をしなかったプラマーは、見事にオスカー候補入りを果たしている)。
「Trust」公式Instagram(@trustfx)より
ドラマ「Trust」では、オスカー女優のヒラリー・スワンクが誘拐されたゲティ3世の母親を演じて話題に
訴訟まではいっていないものの、FXは、このほかに、1月に始まったジャンニ・ヴェルサーチの殺人に関するミニシリーズ「アメリカン・クライム・ストーリー/ジャンニ・ヴェルサーチの暗殺」でも、ネガティブな話題を呼んだばかりだ。ドラマはノンフィクション本を原作にしているのだが、ヴェルサーチの遺族は、番組側から一切相談を受けていないとし、このドラマはあくまでフィクションであると主張している。こちらも、クリエーターはライアン・マーフィー。今をときめくヒットメーカーのマーフィーは、つい最近、多額のギャラでFOXからNetflixに引き抜かれたばかりだ。これはFOXがディズニーに買収されることになったのを受けてのもので、彼は「僕がやることは全然ディズニーじゃないから」と皮肉を漏らしている。ディズニーのトップ、ボブ・アイガーは、マーフィーを失ったことにたいそうがっかりしたようだが、彼の話題作りと賞稼ぎは、こういったリスクとも引き換え。お行儀を重視するディズニーとは、いまいち相性が悪そうだ。

猿渡由紀/L.A.在住映画ジャーナリスト
神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、日本のメディアに寄稿。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。