世界中から様々なアーティストが集まり、新たなアートを発信する街、ニューヨーク。そんなニューヨークの街を愛してやまないアーティストは数多くいる。「20世紀で最も影響力のあるアーティスト」と評される伝説的ミュージシャン、デヴィッド・ボウイも2016年1月に亡くなるまで、20年以上に渡ってこの街に住んでいた。そんな彼の功績を讃えて、現在ニューヨークの地下鉄、ブロードウェイ・ラファイエット駅がデヴィッド・ボウイ一色に染まっている。
デヴィッド・ボウイ公式Instagram(@davidbowie)より
20世紀を代表するロックスター&ファッションアイコン、デヴィッド・ボウイ
英国ロンドン出身のデヴィッド・ボウイは、音楽はもちろん、ファッションやメイクなどでも時代の先端を行き、 60年代後半から亡くなる直前まで、世界の音楽やアートに大きな影響を与えた。グラムロックの先駆者としても知られているが、彼の音楽スタイルは時代、そしてアルバムごとに変化していて、一つのジャンルでは到底表すことができない。また俳優としても活躍しており、 1983年には大島渚監督の『戦場のメリークリスマス』に出演しビートたけしや坂本龍一とも共演している。
彼のファンでなくとも、洋画や洋楽が好きな人であれば、彼の作品に1度は触れたことがあるはずだ。そんなことを書いておきながら、私自身、恥ずかしながら彼の音楽は代表的な何曲かを知っているぐらいで、実はあまり知らない。ただ、ニューヨークのアーティスト、バスキアの生涯を描いた映画『バスキア』でアンディ・ウォーホール役を演じたデヴィッド・ボウイの印象はやたら強く残っている。
世界9都市を巡った回顧展が、最終地のニューヨークで開催中
ブルックリン美術館公式Instagram(@brooklynmuseum)より
大の親日家としても知られ、日本では昨年、彼の活動に関する大回顧展「DAVID BOWIE is」が開催され、大盛況で幕を閉じた。この回顧展は、2013年にイギリス・国立ヴィクトリア&アルバート博物館で開催されて以来、世界9都市を巡回し、先日、最終目的地ニューヨークにやってきたのだ。今回のデヴィッド・ボウイ地下鉄ジャック、実はそのプロモーションの一環として行われているものだが、広告一つ一つにアーティストへのリスペクトと愛が感じられるものだった。
デヴィッド・ボウイ一色に染まった地下鉄の駅、ブロードウェイ・ラファイエット駅というのは、彼が長年に渡り住んでいたコンドミニアムの最寄駅(駅のほぼ真上にコンドミニアムがある)。回顧展のテーマは、“David Bowie is Here”「デヴィッド・ボウイがここにいる」というもので、駅に貼られた写真ひとつひとつが、彼とニューヨークとの関係性を示すものとなっているのだ。例えば、1975年のヒット曲 「Fame」で競演したジョン・レノンとの写真の横にある説明文には「この曲がレコーディングされたスタジオは、ここから4346フィートの場所にある」と書かれている。さらに親切なことに、この駅からそれぞれの写真に記述されたボウイゆかりの場所への道のりが書かれた地図まで飾ってあるのだ。ボウイの手書きメモを拡大した写真も飾られている。そこには、「ブリーカー・ストリートに行き、ディランが『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』で歩いた道を自分も歩いてみる」などと書かれていて、彼がニューヨークの街で生活していたことを感じる事ができるのだ。
ブロードウェイ・ラファイエット駅に貼られた、デヴィッド・ボウイのポスターたち
実際に駅に足を運び写真を見て、デヴィッド・ボウイのことをもっと知りたいと思うようになり、回顧展のチケットも購入してしまった。音楽もダウンロードした。広告の戦略にまんまとはまっているなと思いながら、ニューヨークはやることが粋だ!と感じさせられ、やっぱりこの街が好きだなと改めて思った。

Kay/NY在住TVコーディネーター&プロデューサー
日本のFOXチャンネルで約7年に渡りエンタメ情報番組のプロデューサーを経験した後、フリーランスに。現在はNYを拠点に活動中。アメリカのエンタメと美味しい食べ物をこよなく愛し、NYの最新情報を収集・探検する毎日を送っている。