現地時間の9月18日(火)に開催される「第70回エミー賞 授賞式」のノミネーションが発表された。ドラマシリーズ部門で最多ノミネーションを受けたのは、「ゲーム・オブ・スローンズ」で、22個。だが、次の「ウエストワールド」は21個、「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」も20個で、激戦である。この部門は、過去に2度受賞している「ゲーム・オブ〜」の返り咲きか、昨年、ストリーミングサービスの番組として史上初めてこの部門を受賞した「ハンドメイズ〜」の連勝かの、いずれかになりそうだ。一方でコメディシリーズ部門をリードするのは、16個のノミネーションを受けた「アトランタ:略奪の季節」。その後は、それぞれ新番組の「マーベラス・ミセス・メイゼル」(14個)と「Barry」(13個)が続く。
コメディ部門で作品賞を狙うのは、FOXが放送する「アトランタ:略奪の季節」
「アトランタ」は、昨年も5門でノミネートされ、ドナルド・グローヴァーが主演男優賞と監督賞をダブル受賞した。昨年のコメディシリーズの作品部門受賞者は、この部門の常連である「VEEP/ヴィープ」だったが、主演女優のジュリア・ルイス=ドレイファスが乳がん治療を受けるため、新シーズンの製作が延期されて、今作は今年のエミーに参加しない。ということで、「アトランタ」は、今年、この部門でも希望がもてる。だが、もうひとつ注目したいのは、監督部門だ。
16部門ノミネート「アトランタ:略奪の季節」で主演・監督を務めるドナルド・グローヴァー ©2018 FX Networks. All Rights Reserved.
テレビドラマは映画と違い、回によって違う人が監督するのが普通で、エミーでは、特定の回の特定の監督に対して投票が行われる。「アトランタ」第1シーズンは10話あり、そのうち6話はヒロ・ムライという日本人が監督していたのだが、昨年受賞したのは、別の回を監督したグローヴァーだった。しかし、第2シーズンが対象となる今年は、グローヴァーと並んで、ムライも候補入りしているのである。ムライはまた、8話ある「Barry」でも、2話の監督をしている。昨年の「アトランタ」同様、こちらもまた、監督部門でノミネートされたのは番組のクリエーター兼主演俳優であるビル・ヘイダーだったのだが、つまり今、最もホットな番組からお呼びがかかっている人ということだ。
監督部門で注目したいのは、日本人でノミネートされたヒロ・ムライ
ヒロ・ムライは日本生まれのL.A.育ち。父は、荒井由美やYMOを生み出したアルファレコードの創設者で作曲家の村井邦彦。ムライも、南カリフォルニア大学卒業後、ミュージックビデオでキャリアをスタートさせている。チャイルディッシュ・ギャンビーノの名前でミュージシャンとして活躍するグローヴァーとも、まずはミュージックビデオで組んだ。最近も、最新のビデオ「This Is America」が大きな話題を呼んでいる。「アトランタ」は彼のテレビドラマ監督デビュー作。ほかに「レギオン」でも監督を務めた。
2017年のエミー賞授賞式会場に到着したヒロ・ムライ ©AP/アフロ
今月は、彼が長編映画の監督に決まったことも発表されたばかり。「Man Alive」というSFスリラーで、エイリアン侵略ものらしい。製作配給は20世紀フォックス。キャストは発表されていないが、SFの王道である「スター・ウォーズ」シリーズの新作映画「ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー」に出たばかりのグローヴァーが、何らかの形で出るのかどうか、勝手な期待が高まってしまう。それはさておき、彼がこれからますます注目される人物であることは、間違いなしだ。まずはエミーでの健闘をお祈りしよう。
「第70回エミー賞 受賞式」は、FOXチャンネルで9月18日(火)10:00~12:00に日本独占生放送します!詳細はこちら
今年16部門ノミネートの「アトランタ:略奪の季節」は、FOXチャンネルで9月17日(月)10:00~15:55に全話先行一挙放送します!お楽しみに。詳細はこちら

猿渡由紀/L.A.在住映画ジャーナリスト
神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、日本のメディアに寄稿。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。