From LA:全米でアジアンパワーが炸裂!映画「クレイジー・リッチ!」が大ヒット中

 ついに、我々の番が来たか?白人偏重が批判されてきたハリウッドで、黒人やヒスパニックより、もっと無視されてきたアジア人が、今、突然にしてホットになっている。

NYで出会った彼が、シンガポールの大富豪だった…というストーリー

 先月、北米で首位デビューし、3週目の現在もその地位をキープし続けている映画「クレイジー・リッチ!」(写真上/日本公開9月28日)は、「Crazy Rich Asians」の原題が示すとおり、全アジア人キャストの恋愛映画。主演のレイチェル役に台湾系アメリカ人のコンスタンス・ウー、ニック役にマレーシア人のヘンリー・ゴールディングを抜擢。さらに日系イギリス人のソノヤ・ミズノも出演している。原作がアメリカやアジア諸国で爆発的に売れているとあって、そこそこ行くのではと思われていたものの、時代物ではないアジア系の話が映画になるのは「ジョイ・ラック・クラブ」以来25年ぶりのことで、大きな賭けだった。映画はこれまでに北米だけで1億1,000万ドル以上を売り上げ、1週先に公開された同じワーナー・ブラザースのアクション大作「MEG ザ・モンスター」(これまでに1億2,000万ドル/日本公開9月7日)をも抜く勢い。製作予算が「MEG〜」より1億ドルも低いことを考えれば、さらにすごい快挙で、誰も予測しなかったレベルの成功だ。

It's about @Time 🙌🏼 @constancewu. Share if you are going this weekend! #CrazyRichAsians

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「クレイジー・リッチ!」公式Instagram(@crazyrichasians)より。主演のコンスタンス・ウーは「TIME」誌の表紙を飾った。
 一方、チャート4位の「Search/サーチ」(日本公開10月26日)は、メジャースタジオのスリラーで、アジア人が主役を飾る、初めての作品。今作で長編映画監督デビューを果たすアニーシュ・チャガンティ監督は、最初からこの役にジョン・チョーを希望していたという。チョーが演じるデビッドは韓国系アメリカ人。ストーリー上、その必然性はないが、シリコンバレーはアジア人が多く住むところでもあり、そうであっても、まるで不自然ではない。


「Search/サーチ」公式Instagram(@searchingmovie)より。主演のジョン・チョーは映画「スター・トレック BEYOND」でヒカル役を演じた。

近年のダイバーシティの流れに乗って、遂にハリウッドが変わるかも!?

 アカデミー賞の演技部門の候補者20人全員が白人だったことが2年連続で起きたせいで盛り上がった「#OscarsSoWhite」運動を受けて、ここ数年ハリウッドでは、多様化へのプレッシャーが高まっている。「クレイジー・リッチ!」に出演するミシェル・ヨーも、「5年前だったら、この映画は作られなかったでしょう」と言うし、実際、この映画の公開初週末には、普通以上の数のアジア人観客が劇場に押し寄せ、応援の姿勢を見せた。それでも、2週目、3週目にほとんど数字が落ちず、トップを飾り続けられたのは、アジア系以外にも受けたからにほかならない。実際、映画は、息子の嫁候補が気に入らない母親(ヨー)が、この二人が結婚することを阻止しようとするコメディで、人種を超えて共感できる話だ。これまで、アジア人が白人の物語に共感できてきたのだから、逆がないと考えること自体が、おかしかったのである。

Love you all ❤️

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実写映画「ムーラン」に主演するリウ・イーフェイ公式Instagram(@ yifei_cc)より、映画のイメージビジュアル。
 原作は続きがあることから、映画にもすでに続編のゴーサインが出た。また、2020年には、中国を舞台にしたディズニーアニメ「ムーラン」の実写版が公開になる。こちらには、ジェット・リー、コン・リー、「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」のドニー・イェンなど、大物がそろう。アジア系がおまけのようにぽつんと助演で出ていた時代は、もう終わり。これからは、アジア人も、真ん中で活躍していくのだ。

 

猿渡由紀/L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、日本のメディアに寄稿。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。